新生児室の古参として

私が出産した病院は、母子別室でした。
なので、病室とは別に「新生児室」というのがあって、赤ちゃんへの授乳のために、1日に8回とか10回とか、その部屋に通う形になっていました。

通常なら出産後5日くらいで退院のところ、私は直腸の手術もあって(前回参照)、出産後も13日くらい入院することに。なので、普通なら5日くらいしか通わない新生児室に、私は13日通ったわけです。そのため、「新生児室の古参」っていう謎の存在になってしまいました。

通常5日入院のうち、最初の3日くらいは初めての授乳に四苦八苦。
なんとか授乳が落ち着いてきたかもしれない~ってところですぐに退院、って感じのようでした。
なので、みんな自分のことでいっぱいいっぱい。

でも入院中の新生児ママとしてはプロ、みたいな感じになっていた私は、授乳しながら周囲のお母さんたちを激しく観察していました。
入院生活ってヒマだから。
なにも刺激もないし。

そういう日々だったので、同じ時期に出産した人、同じ部屋の人、私より後に出産したけど私より早く退院した人、授乳がうまくいかずに苦労している人、意外に立派なお胸をお持ちの人・・・って、たくさんの人たちを見てきました。

なので、退院後も時々、育児で困ったりちょっと辛く感じたりしたとき、あの時期に新生児室にいた人たちのことを思い出していました。

たとえば、まだ子どもが半年にならない赤ん坊のころ、夜中の寝室で。
隣で寝ている赤ん坊がふがふが言い始めたので、眠くて重い体をなんとか起こす。
時計を見ると、午前3時42分。
そうね、そろそろ起きる頃だね。
今日もちゃんと3時間弱で目を覚まして偉いね、赤ん坊。

そんなことを思いながら、赤ん坊が大きな声で泣いてその向こうで寝ている夫を起こしてしまわないように、急いで床に置いてあるライトの明かりをつけて授乳クッションをセットして、赤ん坊を抱きあげる。
がっついてくる赤ん坊を制しながら、赤ん坊とおっぱいのポジションを確認。
それを待ちきれない赤ん坊が、声を張り上げる。
「ほら、ちょっと待って。もうすぐだから」と小声で言いながら、再ポジショニング。
なんとかうまく咥えさせて、ひと安心。
と思ったら、咥え方が浅くて、めちゃくちゃ痛い!
「ほら、もう一回やり直し。大きいお口。あーーん」と言いながら、再トライ。
なんとかすべて終えて、ほっとすると、急激に眠気が・・・

そんなとき。
あの、意外と強い明かりがつけられていた真っ白い授乳室で同じ時間を過ごした出産数日後の人たちのことを思い出します。
きっと今頃、あの人たちも、それぞれのおうちの夜中の寝室で、胸をぺろーんと出しながら赤ん坊におっぱいをあげているんだろうな、と。
ほとんど話もしなかった、もう多分会うこともないだろう人たちだけど、とても近くに感じられます。

スマホのアルバムでこの頃の写真を見ると、赤ん坊以外ほとんど何も撮られていない。これは貴重な、赤ん坊以外の一枚。久しぶりに空、見たんだろうな。

みんな、元気かな。

そんな風に思うことで、やるせないときを何度か乗り切ってきました。

こんな風に私が思っていることなんて、きっとあの人たちのだれも思ってもいないはず。
思いもかけずに長い入院生活になったけれど、思いもしなかった糧のようなものを手に入れられたのかもしれないなあと、眠気の中思ったりしました。

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