クリストファー・カルーザ 現役復帰インタビュー

今年11月、突如、現役に戻ってくるようだという情報が飛び交った選手がいます。
クリストファー・カルーザ。フィリピンのスケーターです。

覚えている方も多いと思いますが、2013年、大阪で開催された四大陸選手権で彼は、とても素晴らしい演技を見せました。メダルを争うようなスケーターではなかったのですが、スケートの素晴らしさはそれだけではないということを、あの時のフリーで知った方も多かったことと思います。スケートを滑る喜びに溢れた演技でした。
(ぜひ動画サイトなどで検索してみてください。(「Christopher CALUZA FS 4CC 2013」とか検索するといいと思います)

そのカルーザさんに、復帰情報が出てすぐにメールしました。
すると「え、もう知ってるの? 内緒にしておいて」とのこと。
いやいや、もうSNSで流れています、と伝えると、「あー、そうなんだ。でもまだ国内選手権が終わるまでは発表しないでね」とのことでした。

フィリピン選手権は11月下旬。そこで彼は、2位に入りました。
これは、そんな折、12月中旬のインタビューです。

彼を初めて見たのは、2011年の全米選手権の放送で、でした。彼は2010-11シーズンまで、生まれ育ったアメリカの大会に出場していたのです。「スケートが好きなんだなあ」ということがテレビからもガンガン伝わってきました。

初めてインタビューしたのは、2012年、ニースでの世界選手権。
ショートプログラムの公式練習を見て、「なんて素敵なスケートを見せる選手なんだろう」と思い声をかけたところその場でいろいろ話してくれて、フリーの後に改めてインタビューの時間も割いてくれました。最後にインタビューしたのは2014年のさいたまでの世界選手権になりました。
その後も折に触れてメールのやり取りをしてきましたが、復帰するとは! 嬉しいサプライズです。

ということで、クリストファー・カルーザ選手のインタビューをお楽しみください。

カルーザさんのプロフィール。“Willy Bietakプロダクション”で仕事ができていることをとても誇りに思っているそう。(写真:本人提供)

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―復帰を決断したのは、いつだったのでしょうか?
「9月ごろだったかな。まだクルーズ船上でショーをしながら各地を回っている時期でした」

―復帰を決めた理由は?
「船上のショーに出演している時期に、フィリピンスケート連盟に何度も復帰しないかと声をかけてもらっていたんです。連盟の人は、クルーズ船の契約の時にも来てくれたんですね。それで、連盟に行ってちゃんと話を聞こう、って思ったんです。僕に、どうして復帰してもらいたいのか確かめないといけないなと思ったので。
それでわかったのは、フィリピンには今、有望なスケーターがあまりいなくて、代表として滑る選手がもっと必要だということでした。それに、僕に新しいスケートリンクのPRもしてほしい、とのことでした。それを聞いて、そうか、連盟を進化させて次世代につなげていく人がほしいんだな、そしてそれが僕に託されているんだなと思い、それならと思って決断しました。
僕は、ショーで滑るのがすごく好きなんです。ショーだとジャッジがいないので自由ですしね。友達もできてとても楽しい日々だったので、復帰は本当に難しい決断でした。でも、連盟の思いも伝わったし、僕の時代のスケーターたちがまだ現役でいることに驚きつつもインスパイアされましたので、決めました」

―そういった事情と思いがあったのですね。ショーで滑り始める前、最後の試合はいつだったのでしょうか?
「2014年のさいたまでの世界選手権でした。その後4年以上試合に出ていない期間があって、先月の国内選手権へは、たったの3週間の準備で出場しました」

―さいたまの世界選手権のときには、「まだわからないけれど、次のシーズンもスケートを続けるかもしれない」と言っていたと思うのですが、クルーズ船上での仕事をすることにしたのには、どんな思いがあったのでしょうか?
「そう、そう言っていましたよね。競技を続けるのには、すごくお金がかかるんです。コーチ代、車代、試合に行く旅費などもね。そういったものを、両親がすごくたくさん仕事をして払ってくれていました。そういったことを考えて、です」

―では今回の復帰の要因のひとつには、4年間で貯金もできたということも含まれるのですか?
「あははは。マンションの部屋の購入のために貯金してきたんだけど、でもスケートに復帰しちゃいました(笑)。まだ、マンションの部屋、買っていないのにね(笑)」

―この4年間、ロイヤル・カリビアン・クルーズで滑っていましたが、どんなことを学んだと感じていますか?
「たくさんのことを学びました。滑ることがどんなに好きかということもわかりました。もちろん辛い日もあったけど、それでもスケートが好きだなと思ったんです。自宅から遠く離れたところに長期間行って、世界中から来ている人たちとショーに出たりすることで、色々な人がいて、様々な文化があることも学びました」

ロイヤル・カリビアン・クルーズ船上での「Explorer of the Seas」というショーでのカルーザ選手。(写真:本人提供)

―今は毎日練習しているのですか?
「週6日練習しています。コーチは以前と同じ、ナターシャ・ボブリーナです」

―今シーズン、ルールがすごく変わりましたけれど、何か違いを感じましたか?
「フリーで、1つジャンプが減って30秒短くなった、ということだけですね。それ以上でも以下でもない。ルールが変わってもフィギュアスケートは僕にとっては変わらないものです」

―今季の始まる7月には、高橋大輔選手も現役復帰を発表しましたが、それを知っていましたか? そして、年齢を経て現役に戻ってきたことでなにか変わったなと感じたことはありましたか?
「ダイスケが復帰することはもちろん知っていました。彼は僕がずっと尊敬してきたスケーターの一人だから、彼に会ったときには、夢がひとつ叶ったと思いました。
僕も今季復帰を考えて、その後実際に復帰はしたけれど、彼ほどのスケーターが4年を経て復帰したことについてどう感じてきたのか想像もできません。彼に限らず、年齢にかかわらず、僕はすべてのアスリートからインスパイアされてきたと思っています。
復帰はしたけれど、僕は相変わらず心身ともにもがいています。でも、たとえばショーに出はじめのころは小さいリンクに対応するのに苦心したんだけど、そういった様々な経験から、人は多くを学ぶものだと思います。
年齢を経てこのスポーツに戻ってきたことで前との違いがあるとすれば、以前よりも僕自身がもっと賢くなったし、フィギュアスケート自体とスケーターたちを以前以上にリスペクトするようになった、ということだと思います」

―現役選手としての目標は?
「今季は自分ができることを見ていきたい。4年間、試合に出ていないから、まずは自分のできることを最大に頑張ってみたいです」

アジアを回っているときに寄った、シンガポールの湾の近くの庭園で。(写真:本人提供)

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次の試合は、1月9日からのEduSport Trophy 2019
20代後半になってもスケートを続けていたり、現役に戻って来たりする選手たちが、少しずつ増えてきたように感じます。勝つために戦うスポーツとしての楽しみ以外のもの同時に感じられるフィギュアスケートというスポーツの素晴らしさを、ぜひ多くの方とシェアしていけたらいいなと、私自身思っています。


朝日カルチャーセンター新宿教室
●1月19日(土)13:00-14:30
「フィギュアスケートの楽しみ方 ~ヤグディンとプルシェンコを語る(1)」
現在、男子シングルなどで活躍している選手たちも、子どもの頃には、世界のトップスケーターを見て憧れて大きくなってきました。その頂点にいるのが、アレクセイ・ヤグディンとエフゲニー・プルシェンコという、ロシアの2人の男子シングルスケーターです。2歳半違いで、一時期はアレクセイ・ミーシンコーチのもとで練習をともにしてきました。といっても、仲良く切磋琢磨という雰囲気ではなく、お互いに本気で相手を倒そうとしていた、そんな2人です。1回目の今講座では、その2人の来歴やジュニア時代、シニアに上がって1~2年くらいまでを振り返る予定です。

朝日カルチャーセンター新宿教室
●3月2日(土)13:00-14:30
「フィギュアスケートの楽しみ方 ~ヤグディンとプルシェンコを語る(2)」
多くのスケーターたちが憧れたアレクセイ・ヤグディンとエフゲニー・プルシェンコ。2回目の今講座では、2002年ソルトレイクシティオリンピックとそこまでの時期の2人の凄まじさについてお話します。毎シーズン、グランプリファイナル、ロシア選手権、ヨーロッパ選手権、世界選手権と、ともに出場する試合で、ものすごい演技を見せてきた2人。 “ライバル関係”と呼ぶには激しすぎる2人の、筆舌に尽くしがたい戦いを熱く語ります。

SBS学苑静岡校
●2月16日(土)10:00-11:30
「華麗なる氷上の戦い 男子フィギュアスケートの世界」
現在、フィギュアスケートの男子では、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェンらが活躍しています。羽生結弦の自叙伝に携わるなど、多くのトップ選手の声を聞いてきたライターが、ヤグディンやプルシェンコの時代から現在までの男子シングルの世界を、取材現場でのエピソードや裏話を交えて振り返ります。
(※同日の午後の遠鉄校での講座と、基本的には内容は同じです)

SBS学苑遠鉄校
●2月16日(土)13:30-15:00
「華麗なる氷上の戦い 男子フィギュアスケートの世界」
現在、フィギュアスケートの男子では、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェンらが活躍しています。羽生結弦の自叙伝に携わるなど、多くのトップ選手の声を聞いてきたライターが、ヤグディンやプルシェンコの時代から現在までの男子シングルの世界を、取材現場でのエピソードや裏話を交えて振り返ります。
(※同日の午前の静岡校での講座と、基本的には内容は同じです)

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