ある視点から⛸

「GPファイナルの結果」と「五輪の結果」の、相関関係を探ってみたり。

GPファイナルが迫ってきているはずでしたが、オミクロン株の登場により、本日2021年12月2日、中止が発表されました。

中止にはなってしまいましたが、「五輪シーズンのGPファイナルの結果」とその1か月半から2か月後の「五輪の結果」を見比べることは味わいのある楽しみなので、ここに残しておきます。

表の説明

・名前の後ろの( )内の数字は、五輪の順位。
五輪メダリストには、マーカーをつけています。
・紫色の(ー)は、五輪に出場しなかった選手(涙)です。
・「備考」はGPファイナルに出ていない選手。

⚠️以下、横長の表が出てきます。スマホでご覧の方は、スマホを横長にすると断然見やすくなります。

2017年GPファイナル@名古屋 と 2018年平昌五輪

■2017年GPファイナルの順位表

男子(五輪順位)女子(五輪順位)ペア(五輪順位)アイスダンス(五輪順位)
1ネイサン(5)ザギトワ(1)サフマッソ(1)パパシゼ(2)
2宇野(2)ソツコワ(8)スイハン(2)テサスコ(1)
3コリャダー(8)オズモンド(3)デュハラド(3)シブス(3)
4ヴォロノフ(ー)コストナー(5)ストクリ(ー)ハベドナ(4)
5リッポン(10)宮原(4)タラモロ(4)チョクベイ(9)
6ジェイソン(ー)樋口(ー)ユージャン(8)カペラノ(6)
備考五輪1位:羽生、3位:ハビ五輪2位:メドベージェワ  

男女シングルの紫色の3選手(ヴォロノフ、ジェイソン、樋口選手)は、GPファイナルには出場したけれど、国内選手権を経た結果として、五輪出場はなりませんでした。

またペアのストルボワ&クリモフは、ロシア選手権2位、ヨーロッパ選手権2位だったのですが、IOCに五輪への出場が認められず、平昌五輪に出場ができず……。

今振り返ると、いろいろなことが思われます。
ああソツコワってGPファイナル2位だったのね、とか、コリャダーは3位でしたそうだよね、とか。

GPファイナル2017result
平昌五輪result

2013年GPファイナル@福岡 と 2014年ソチ五輪

■2013年GPファイナルの順位表

男子(五輪順位) 女子(五輪順位) ペア(五輪順位) アイスダンス(五輪順位)
1羽生(1)真央(6)サフゾル(3)メリチャリ(1)
2パトリック(2)リプニツカヤ(5)ヴォロトラ(1)テサスコ(2)
3織田(ー)アシュリー(7)パントン(4)ペシャブル(4)
4町田(5)ラジオノワ(ー)ペンジャン(8)ボブソロ(5)
5コフトゥン(ー)ソトニコワ(1)デュハラド(7)ウィポ(7)
6ハン・ヤン(7)ポゴリラヤ(ー)ムーモス(5)カペラノ(6)
備考五輪3位:デニス・テン五輪2位:キム・ヨナ
  3位:コストナー
五輪2位:ストクリ五輪3位:イリカツ

今回も、GPファイナルには出場したけれど、五輪には出られなかったという、紫色の人々が4人います。なかでも織田さんは、表彰台にのっている分切ない。この直後の全日本選手権で引退となりました。

このシーズン男子では、羽生選手とパトリックが2大会で当たり、2戦ともパトリックが勝った(しかも、1戦目のパトリックの得点を、2戦目で羽生選手が超えたけれど、パトリックはその上をいっていたというようなことがあったり)……けれど、このGPファイナルで羽生選手が勝ち、ソチ五輪優勝へと向かって行った、という大会でした。

コフトゥンも、キャリアを通して五輪に出られなかったですよね。このシーズン、母国開催のロシア、男子シングルには「1」枠しかなくて、最終的にプルシェンコが出場しました。ラジオノワもポゴリラヤも、五輪には出られなかった。

このGPファイナルのとき、ソトニコワにインタビューするために待ち合わせをしたらコフトゥンも一緒に来て、ホテルの近くのモールみたいなところで3人でちょっとだらだらとお話をしました。多分エキシビションの日とかその前後で、時間があるとのことで。
ソトニコワに「ここ数か月ですごく変わったように見えますね」と言うと、「そう、シーズン序盤の試合の映像を見て、ちょっと絞らないとだめだなって思ったので」とさらっと言っていました。
あとからだったら何とでも言えるわけだけど、その言葉を聞いたときに、彼女の中にある確固とした覚悟のようなものを感じたのを覚えています。五輪でソトニコワが優勝するとは当時の私は想像していなかったと思うけれど、絞ろうと思って身体を絞るくらいには覚悟が決まっているんですね、と感心というかすごいなあという思いで聞いていたことを、今も時々思い出します。

女子は、真央さんが1位でしたね。そうか、リプニツカヤが2位でした。
GPファイナルのメダリスト3人、五輪では3位以内に入らなかったんですね。ソチ五輪では、真央さんは奇跡のフリーを見せて、リプニツカヤは団体戦で会場を熱狂させて優勝し、アシュリーは団体で銅メダルを手にしています。

GPファイナル2013result
ソチ五輪result

2009年GPファイナル@代々木 と 2010年バンクーバー五輪

■2009年GPファイナルの順位表

男子(五輪順位) 女子(五輪順位) ペア(五輪順位) アイスダンス(五輪順位)
1ライサチェク(1)キム・ヨナ(1)シェンツァオ(1)メリチャリ(2)
2織田(7)安藤(5)パントン(2)テサスコ(1)
3ジョニー(6)鈴木(8)サフゾル(3)ペシャブル(7)
4アボット(9)アシュリー(ー)ムホトラ(7)カーズ(8)
5髙橋(3ロシェット(3)川スミ(4)カペラノ(8)
6トマーシュ(19)レオノワ(9)ジャンジャン(5)クロポワ(14)
備考五輪2位:プルシェンコ五輪2位:真央 五輪3位:ドムシャバ

こうやって見ると、このシーズンのGPファイナルに出場した選手のうち、バンクーバー五輪に出場できなかったのはアシュリー・ワグナーだけだったんですね。

そのアシュリー、このGPファイナルのあとの全米選手権では、SP5位、フリー2位で、総合3位。このとき、アメリカ女子の五輪枠が「2」だったので、全米1位と2位のレイチェル・フラットと長洲未来が五輪に出場しました。

ファイナル4位なのに、全米のフリーも2位なのに、なぜ全米のSPで転んでしまったのかーーーというようなことなど思ったかもしません。
ですがこの悔しい時期を経たことで、次の次のシーズンオフに拠点を変えます。大学進学のための貯金を使って引っ越し、コーチを変え、バイトもやめ、スケートに本気で向き合うことに。
そうして迎えた2011-12シーズン、大ブレイク。フリーは『ブラックスワン』、懐かしい。全米初優勝、世界選手権4位(2回目の出場でした、1回目は4年前で16位)。振り返れば、バンクーバー五輪に出場できなかったことは、彼女を今のようなスケーターに変えたのだともいえるかもしれないわけです。

アイスダンス6位の「クロポワ」の「ポワ」は、2021年現在カナダトップダンスチームのギレス&ポワリエのポワリエです。

GPファイナル2009result
バンクーバー五輪result

2005年GPファイナル@代々木 と 2006年トリノ五輪

■2005年GPファイナルの順位表

男子(五輪順位) 女子(五輪順位) ペア(五輪順位) アイスダンス(五輪順位)
1ランビエール(2)真央(ー)トトマリ(1)ナフコス(1)
2バトル(3)スルツカヤ(3)ジャンジャン(2)グルゴン(3)
3髙橋(8)中野(ー)サフゾル(6)デュブロー(棄権)
4織田(ー)安藤(15)ペトティホ(5)チャイサフ(8)
5サンデュ(13)ソコロワ(14)オベスラ(8)ドムシャバ(9)
6シズニー(ー)パントン(4)デロション(4)
備考五輪1位:プルシェンコ五輪1位:荒川
  2位:コーエン
五輪3位:シェンツァオ五輪2位:ベルアゴ

この大会も、紫色が4名います。
トリノ五輪の日本男子の枠は「1」でした。GPファイナルに髙橋選手と織田さんが出場しているので、もともと、どちらか1人は五輪に出場できなかった。

女子では、真央さんがトリノ五輪には年齢制限で出場できないことが、日本中で話題になったシーズンですね。

中野さんは、このシーズン大ブレイクしました。急遽出場が決まったNHK杯で優勝したり、織田さんととても似た成績を残したシーズンで。

トリノ五輪、日本女子は「3」枠ありましたが、荒川さん、村主さん、安藤さん、恩田さん、中野さんの5人で3枠を争う形になりました。
GPファイナルの翌週、同じ代々木第一体育館で開催された全日本選手権の女子最終グループ6人の演技、ものすごかった。過去にいくつか「この最終グループ6人全部すごい」っていう大会があるのですが、その1つが、2005年全日本の女子フリーでした。

シズニーは、この後全米選手権で7位で、トリノには出場できず。バンクーバー五輪には出場するかなと思っていたのですが、2009年と2011年の全米で優勝しているのに2010年は10位でした。

アイスダンス3位の「デュブロー」は、デュブレイユ&ローゾン。そう、現在アイスダンスの一大勢力っていうかものすごいストロングストリームであるモントリオールチームのコーチ2人です。(モントリオールのコーチにはほかにも、ロマン・アグノエルとかスコット・モイアとかも)

この大会、ジェフのエキシビ『アヴェ・マリア』と高橋選手のエキシビ『ノクターン(振付by自分)』が、いずれもシンプルでものすごーーーく素敵でした。暗めの照明のなかでスポットライトのなかでスーーーッと滑りぬけていく様子とちょっと光って見えるトレースなどなど、シンプルなスケートが美しかったです。

それから、ステファンのスピン、3つのうち2つが「レベル1」でした。(注:ステファンはスピンがとても上手です。)まだ新採点になって2シーズン目くらいで、今ほど「取りこぼし」とか「戦略」というような意識はなかったという記憶です。私もまだ新採点の靄のなかにいて、ステファンのあの素敵スピンがレベル1なのかーそうなんだー、という思いでいました。

GPファイナル2005result
トリノ五輪result

2001年GPファイナル@キッチナー と 2002年ソルトレイクシティ五輪

■2001年GPファイナルの順位表

男子(五輪順位) 女子(五輪順位) ペア(五輪順位) アイスダンス(五輪順位)
1ヤグディン(1)スルツカヤ(2)サレペル(1)ボンクラ(4)
2プルシェンコ(2)クワン(3)ベレシハ(1)アニペー(1)
3ゲーブル(3)ヒューズ(1)シェンツァオ(3)ドロバナ(5)
4エルドリッジ(6)ブッチルスカヤ(6)イナジマ(5)フーマリ(3)
5本田(4)恩田(17)ペトティホ(6)チャイサフ(6)
6ディネフ(13)マリニナ(棄権)アビベル(ー)デュブロー(12)
備考   五輪2位:ロバアベ

旧採点時代最後の五輪です。

男女ペアで、GPファイナルメダリストが全員五輪でもメダルを取りました。しかも男子とペアは順位が(ほぼ)変わらず。

そうなると、女子の、ヒューズがGPファイナル3位から五輪で優勝したのが際立ちます。16歳で、母国アメリカで開催の五輪で、スルツカヤとクワンに比べて守るものもなく、勢いのままにきゅーっと行けた感じがします。
(今の採点方式だったら違う結果になったと思うけれど、)フリーでは3+3を2回跳んだ、というのも、誰にも止められない勢いみたいなものを感じました。

「勢い」大事です。自分だけではどうしようもないもの。でもまず先に自分自身ががんばっていないと、「勢い」自体を引き寄せられない。そんな風にも感じます。

GPファイナル2001result
ソルトレイクシティ五輪result

5つのシーズンの、GPファイナルと五輪の結果を比べてみて

こうして見てみると、いくつかのことに気づきます。

・五輪直前のGPファイナル、日本で開催されまくっている。

・想像通りですが、GPファイナルで優勝した人たちは、五輪でメダリストになる確率が結構高い。

・ペアとアイスダンスは、近年、GPファイナルのメダリストの多くが五輪メダリストになっている。

・GPファイナルに出場していなくても、五輪メダルは可能。

・サフチェンコとハオ・ジャンはなんと4度も五輪直前のGPファイナルに出ています! 
 サフチェンコは2人のパートナーと、ハオ・ジャンは3人のパートナーと。本当に素晴らしい。

・織田さん、パン&トン、カッペリーニ&ラノッテは、3度五輪直前のGPファイナルに出ています。
パントンとカペラノはその3度とも五輪に出ているのに対し、織田さんは2010年バンクーバー五輪のみ出場。
枠取りについてとか枠数が足りないこととかいろいろ思いを巡らせてしまいます。織田さんのあのシーズンのフリー『ウィリアム・テル序曲』、好きでした。(てっきりデイヴィッド振付けかと思い込んでいたのですが、ローリーだったんですね。このシーズンのSP『コットンクラブ』はデイヴィッドでした。)

2021年GPファイナル@大阪 出場予定だった選手たち

中止にはなってしまいましたが、来週から始まる予定だった、GPファイナル2021の出場予定だった選手たちを、GPポイント順の表を載せておきます。

■GPポイント順です!

男子女子ペアアイスダンス
1鍵山ワリエワミシガリパパシゼ
2宇野シェルバコワスイハンシニカツ
3ヴィンセントトゥクタミシェワタラモロハベドナ
4ネイサン坂本ボイコズパイポ―
5コリャダーフロミフパブホディチョクベイ
6ジェイソンコストルナヤりくりゅうギニャファブ

男子Standings
女子Standings
ペアStandings
アイスダンスStandings

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hasegawahitomi
ライター 長谷川仁美です。 フィギュアスケートのこと、そのほかに日々のことなどを。 「やっぱり、フィギュアスケートっていいな」「やっぱり日常っていいな」という思いで、このサイトを続けています。