インタビュー

フィギュアスケートの衣装屋さん:ソフィー・トーマスさん インタビュー(1)

(以前、noteに掲載したインタビューの再掲です。一部、修正を入れています。)

フィギュアスケートの衣装を作る、クチュール会社のソフィーさん

夢のような生地づかい、きらめき……おもわず本当にため息をつくような衣装が、今のフィギュアスケート界には、たくさんあります。
スポーツとしてのフィギュアスケート観戦にくわえて、衣装を見るのもまた、フィギュアスケートを見る喜びのひとつだと感じている方も多いのではないでしょうか。
美しいものを見るのは、本当にきもちがいいものです。

そこで、今回は、フランスのクチュール(仕立て・縫製)会社「ASTRAEE(アストラエ)」のソフィー・トーマス(Sophie Thomas)さんに、衣装のことなどいろいろとお話をうかがいました。

Sophie Thomasさん

ソフィーさんは、ここ5シーズンの坂本花織選手の衣装を手掛けたり、過去にはパパダキス&シゼロンの衣装なども多数制作されたりしてきました。
ASTRAEEの公式サイトには、「ああ、知ってる知ってる」という衣装があれもこれも掲載されています。楽しい。
ISU SKATING AWARDのベストコスチューム賞に、ソフィーさんによる坂本選手の「マトリックス」がエントリーしたこともありました。

ソフィーさんインタビュー

―ソフィーさんが衣装制作を始めたのは、いつ、どういうきっかけからだったのでしょうか。

クチュール(仕立て・縫製)の会社「ASTRAEE(アストラエ)」を11年半前にたちあげて、そこから本格的に始めました。

私自身、8歳から競技で社交ダンスをしていたので、小さなころからコスチュームやアクセサリーに興味があったんですね。
それで自分でつくりたいと思い、クチュールの学校を卒業しました。
だから、いつから、と言われたら、会社としては11年半前からだけど、小さなころから情熱をもってやってきました、ということですね」

―ASTRAEEのサイトを拝見すると、ソフィーさん、社交ダンスのフランスチャンピオン経験者ですよね!

そうですね、フランスチャンピオンにもなりましたね。
そのパートナーと結婚しました。

―素敵ですね。当時、自分の競技用衣装もつくっていたのですか?

十代のころから、自分とパートナーの衣装はほとんどつくっていました。
もちろん最初はうまくできなくてひどい衣装の時もあったけど(笑)、母が助けてくれたり、経験するたびにいいものがつくれるようになったりしていきましたね。
そのあと、クチュールの学校に通ったこともあって、自分のいた社交ダンスクラブの子たちの衣装をつくるようにもなりました。

―フィギュアスケートの衣装は、どう始めたのですか?

私は、社交ダンスをヴィルールバンヌ(リヨン郊外)で習っていたんですね。
その時のコーチが、アイスダンスの選手たちのダンスレッスンも担当していたことから、「衣装をつくっているんだったら」って、アイスダンス選手たちを紹介してくれました。
そうやって数人につくったところ、口コミとか試合で見てくれたりとかで、広がっていきましたね。

―ソフィーさんが手がけた最初のフィギュアスケート衣装は?

ロシアのティファニー・ザホースキー(Tiffani ZAGORSKI)と、当時のパートナーのアレクシ・ミアル(Alexis MIART)で、2010年から3~4シーズン担当しました。

画像3を拡大表示
ザホースキー&ミアル

ティファニーは、別のパートナーと組んで2021の世界選手権にも出ていましたよね。
実は、ASTRAEEを立ち上げて最初の衣装は、(社交ダンスの衣装ではなく、)彼らのものだったんです。
会社を登記したのが6月だったんですけど、ちょうどスケートのシーズンとしては、新しい衣装を作る時期だったので、最初のお客さんがティファニーになりました。
これまでには、日本の平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンションの衣装も何着かつくっています。

―平井&アソンション組の衣装も、ソフィーさんだったのですね。
ASTRAEEという名前にしたのは?


ダーツで決めたのよ(笑)! というのは冗談だけど、実は理由はないんです。
もともと社交ダンス界とフィギュアスケート界の橋渡しになるような名前がいいと思って、APSARA(美しい、舞踏の女神の名前)にしようと思っていたの。
でも登記しようと思ったらAPSARAはもう使われているということで、いろいろな人に電話をかけて候補を挙げてもらったなかに、「ASTRAEE」があったので、これでいこうよって(笑)。
時々、「アトリエ(atelier)」と「ソフィー・トーマス(Sophie Thomas)」をかけているのですかって言われたりもするんだけど、全然関係ないんです、ふふふ」

平井絵己&マリオン・デ・ラ・アソンション
2015-16シーズンSD「Il Terzo Fuochista」ほか

(通訳:Yuko SPRUNGさん)
(※)写真は、ASTRAEEの許可をいただき掲載しています。無断使用はお控えください。

▶ソフィーさんのアトリエのサイトは、こちら。素敵です
https://en.astraee.fr/l-atelier

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ライター 長谷川仁美です。 フィギュアスケートのこと、そのほかに日々のことなどを。 「やっぱり、フィギュアスケートっていいな」「やっぱり日常っていいな」という思いで、このサイトを続けています。