2018-19シーズン

世界選手権 2日目の思い出

3月21日木曜日(祝日)

ペアFSと男子SPのこの日は、ジャッジと反対側のS席4列目。前日の豆粒席と比べると、違う競技を見ているみたい。どちらの席にもそれぞれに趣があり、それが全然違っている、っていう感じです。

ただ今大会に限っての話になりますが、この席からだと選手の演技越しに向こう岸のヤグディンが見えるので、演技もヤグディンも見たい私には、サイコーでした!

ペアの最後2グループは、すごかったですね。素晴らしい演技ががんがんに続き、毎回ぞくぞくして、スイ&ハンでは気づくとスタオベしていました。スタオベは1大会で1回すれば十分くらい派なのですが、やはり世界選手権となると選手たちの思いや演技も凝縮されていて、ぐっときますね。今回は計3回スタオベしました。スイ&ハンは、そのなかの1回です。

インタビューをしてきた選手たちには、それぞれに思い入れというか愛着が自然と沸くのですが、今回は、スイ&ハンについて書こうと思います。

彼らにも何年もインタビューさせてもらってきましたが、ソチ五輪代表になれないことが実質的に決まった、2013年NHK杯でのことです。
あの大会、中国ペアは2組出ていて、翌年のソチ五輪2枠のうち1枠はパン&トンと決まっており、残る1枠はNHK杯の上位チーム、ということになっていたそうです。ソチ五輪の中国ペアの枠は、2枠。その前のシーズンの2013年世界選手権で3枠から2枠にしてしまったのには、スイ&ハンも関係していました(パン&トン5位、ペン&ハオ・ジャン11位、スイ&ハン12位)。

2013年のNHK杯に出場した中国ペア2組とは、そのペン&ハオ・ジャンとスイ&ハンの2組。ちなみに、どうしても私のなかでハオ・ジャンだけは「ハオ・ジャン」というフルネーム呼びが安定しているので、フルネーム表記です。

そのNHK杯、SPは、
1位がヴォロソジャル&トランコフ(82.03点)
2位がスイ&ハン(70.13点)
3位がペン&ハオ・ジャン(65.09点) の順となりました。
FSでは
1位ヴォロトラ(154.46点)
2位ペン&ハオ・ジャン(117.09点)
3位スイ&ハン(101.19点)で、
総合では、
1位ヴォロトラ(234.49点)
2位ペン&ハオ・ジャン(182.18点)
3位スイ&ハン(171.32点) と、10点以上の差をつけてペン&ハオ・ジャンが中国2組の中で上位に。そしてペン&ハオ・ジャンはGPファイナルへ、スイ&ハンはGPファイナル進出はなし、ということになりました。

このFS後の記者会見のとき、スイちゃんがとても泣いた目をしていたんですね。その時には、この大会でペアのソチ五輪中国代表が決まることを私は知らなかったので、順位を落としてしまって悔しいのかな、と思ったり。会見での彼らのコメントから、SPの後にハンくんが熱を出し、そのために思うような演技ができなかったのだと知りました。

そのNHK杯では、その中国の2組にそれぞれ別々にインタビューしたのですが、嬉しそうでにこにこのペン&ハオ・ジャン組に比べて、スイ&ハンはとても表情も暗く、あまり言葉も出てこない状況。スイちゃんは、弱った時に気持ちを強く持てるような本を繰り返し読んでいたとも聞きました。

そして、ソチ五輪出場は叶いませんでした。

振り返ってみるとスイ&ハンは、ジュニア時代は「中国雑技団」と言われちゃうくらいテクニックが先行していてスロージャンプでもツイストリフトでも4回転をかるーく成功させて、2人ともに感情とか感性というものがないような驚きの演技、なペアでした。
その後も怪我とかもろもろあって、でも、辛苦のほうがずっと多いように見えたこれまでを、ぐっとこらえて頑張り続けてここまで来て、いつも笑顔を見せられる、ときには余裕さえも感じさせるような表情の2人になりました。

3年くらい前からは、「インタビューだよね?(英語)、こんにちは、げんき?(日本語)」とやって来てくれて、英語、日本語、中国語がまぜこでインタビュー。とにかくしゃべる、しゃべる、しゃべるスイちゃん……その様子を一歩下がった感じでにこやかに聞いているハンくんに、「で、ハンさんはどう思うんですか?」と聞くと、「ほら、なんかにやにやしてるでしょ」とスイちゃんが勝手に答える、という具合。2人の関係性もより充実したものになっているな、と感じます。

そういう、2人の人としての成長、ペアとしての関係性の成熟とともに、演技が濃厚で叙情的なものになっていて、昔、ロシア民謡でメカニカルな動きをしていた人たちと同じとは思えない感じになってきました。

そして、今回の演技。今回もたくさんの怪我を経たあとでの演技で、でもそうしたことを感じさせない出し切った演技に、ただただ胸打たれました。

なんだか、スイ&ハンで長くなっちゃいました。

 

ペアSP後、ミーシャと会って、近況などなどを聞く。この様子は、またこのブログで公開しますので、しばらくお待ちください。

ミーシャとお話しているときに、デニス・テンの追悼映像が流れました。ミーシャに「ほら、始まったよ」と言われて一緒に見たのですが、長く同じ大会に出てきたデニスのこの映像を、ミーシャは、じっと見たり、映像に撮ったりしていました。

会場には、デニスを偲ぶD10 WORLDというブースもあり、私は、毎日足を運びました。オフの様子が編集された3分ほどの動画。彼が友達たちと何を話しているのかはわからなかったのですが、胸に深く迫ってきました。デニスの撮影したスケーターたちの写真がとても情緒があり、1枚1枚じっくり観賞。

男子SPは、お隣の席の人とぽつぽつお話しながらの観戦。こういうのもすごく久しぶりで、私にとっては新鮮で楽しかったです。お隣さんが、ジュリアンくんの演技にスタオベしていたのは、ちょっと嬉しかった。
(ジュリアンくんの連載3回目が『フィギュアスケートLife Vol.17』に掲載されています。ちなみに1回目はこちら、2回目はこちらです。)

ジュリアンくん、今季は五輪翌シーズンで、気持ちの保ち方がすごく難しい、どこをどう目指していくのか定まらない、そのため今回の目標はSP通過すること、と言っていました。3A、3Lz、3F+3Tをきれいに決めたいい演技だったので、これなら20番くらいで通過できるんじゃん、と思っていたら、なんということでしょう、24番通過。男子もレベルが年々ものすごく上がっていますね。

男子SPも21時ころには終了。早く終わるのは嬉しい。がしかし、結局さいたま新都心駅から電車に乗れたのは、21時半ころだったと思います。この会場の辛さは、帰りの駅&電車の混雑と、自宅まで意外と時間がかかるということ……。

家に帰ると、寝落ちしている夫の隣で、2歳の子どもがにっこにこで「ママ―!」と。嬉しいけど、なんでそんなにショートスリーパーなんだ君は! 寝かせて、お風呂に入って一息つくと、もう結構な時間。自宅からの通い観戦は、結構ハードです。

 

 

以下こんな講座もあります。

もっと!ヤグディンとプルシェンコを語る

4月16日(火)19:000-20:30 朝日カルチャーセンター新宿教室

1月と3月の講座、「ヤグディンとプルシェンコを語る」が好評だったことから、さらにこの2人の戦いを掘り下げる講座です。今回は、2000-01シーズンのグランプリファイナルと2001-02シーズンのグランプリファイナルに大会を絞り、深くじっくりお話します。1月と3月の講座に参加された方はもちろん、参加されなかった方にも、2人のファンにも2人を知らない方にも楽しんでいただけます。2人の熱い戦いを堪能しましょう。

フィギュアスケートの楽しみ方 ~2018-19シーズンとは・・・~

5月11日(土)13:00-14:30 朝日カルチャーセンター新宿教室

2018-19シーズンには、大きなルール変更がありました。これによってどんな変化があったのか、なかったのか、また、それぞれの選手たちがシーズン前にはどんなことを思い、結果的にどんな時間を過ごしたのか……など、今季全体を振り返る講座です。シーズンインしてからは毎週のように試合があったため、記憶はどんどん上書きされてきましたが、国別対抗戦から1か月たち少し落ち着いた今、今季を俯瞰します。

6月は、DOIとかぶってしまいました・・・。

フィギュアスケートの楽しみ方 ~伝説の演技を知る!~

6月29日(土)13:00-14:30 朝日カルチャーセンター新宿教室

「アイスダンスと言ったら、トーヴィル&ディーンの『ボレロ』だね」とか、「ペアと言えば、ゴルデーワ&グリンコフの『月光』でしょう」など、フィギュアスケート界には、伝説の演技というものがあります。伝説の演技には、伝説になるだけの理由があり、それを知ることで、ますますフィギュアスケートが好きになることと思います。今回の講座では、そうした伝説の演技を、当時のスケーターの状況や思いとともにお話します。

 

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ライター 長谷川仁美です。 フィギュアスケートのこと、そのほかに日々のことなどを。 「やっぱり、フィギュアスケートっていいな」「やっぱり日常っていいな」という思いで、このサイトを続けています。