明日、男子シングルがスタートします。
その出場者のひとり、ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)選手のインタビューをご紹介します。
2月上旬の忙しい時期に、電話でお話を聞かせてくれました。
昨シーズンの世界選手権で素晴らしい演技を見せ、その後現役続行して試合に出続けてきた26歳。
ミーシャにとっての平昌五輪とはどんなものか、ぜひ試合前にご覧ください。
―昨シーズンももしかしたら最後になるかもしれないとのことでしたが、今シーズンも競技を続けようと決めたのには、どんな理由があったのでしょう。
「たくさんの理由があって、話が長くなってしまいます。1つ目は、僕が僕の意志で、競技生活の最後だというところを見せたかったから。2つ目は、五輪という特別な舞台で、選手と振付師という2つの役割で参加できるというとても稀で貴重な経験ができるからですね。3つ目としては、僕はウズベキスタン代表だけど、ウズベキスタンには20年近くスケートリンクがなくて、3年少し前(2014年12月)にやっとできたんです。だから、その新しいリンクでスケートを始めた子どもたちや、うまくなろうとしている子どもたちに、僕が表彰台に乗ったり五輪に出たりする姿を見てもらうことで、スケートを頑張っていこうという気持ちを持ってほしいと思ったからですね。それに4つ目をあげるのなら、(タチアナ・)タラソワが続けなさいと言ってくれたからです。僕には足のケガがあるということを彼女はもちろん知っていたけど、『どんなにたくさんテーピングしてでも、あなたは五輪に出るべきよ。もし最下位だったとしても』って言ってくれた。それで、心を決めました。タラソワは、僕のメンターの一人でもあるんです」
―4つともゆるがせにできないような理由ですね。実際に復帰を決めたのは、いつ頃だったのでしょうか。
「タラソワにそう言われたときだから・・・8月くらいにソチで開催された、ロシアスケート連盟のテストスケート(プログラムの確認合宿のようなもの)のときですね。僕は今シーズン、ロシアの代表選手たちの4人に5つ(セルゲイ・ヴォロノフのショートとフリー、アレクサンドル・ペトロフのショートプログラム、アンドレイ・ラズキンのショートプログラム、マキシム・コフトゥンのフリー)のプログラムを作ったので、振付師としてテストスケートに参加したんです」
―今季のプログラムについておたずねします。ショートプログラムは、3シーズン前に使ったのと同じ『アヴェ・マリア』ですね。
「僕の最後の演技にふさわしいものにしたいという思いがあったんです。このショートは、僕自身がすごく気に入っているプログラムで、とても意味深いもの。3シーズン前に滑っていたとき、ジャッジ、スケーター、コーチ、いろんな人たちが『このプログラム、すごく好き』って言ってくれたんです。だからこのプログラムをもう1回滑ろうと思ったし、2回目となると以前よりももっと深い意味合いを表現できると考えています。だから、今シーズンの『アヴェ・マリア』は、完全に違う新しいバージョンのものにしているんです」
―フリーは『タイスの瞑想曲』。メロディラインがとても美しい曲ですよね。
「そうなんです。フリーは、この数年チームで考えていたいくつかのプログラムのなかでも、美しく壮大な音楽を、と思ったんです。(スケート選手としてのキャリアを通して培った)僕の表現の進化や成熟、美しさを見せられると思ったから選びました」
―2つとも、ラストシーズンのプログラムとして選んだんですか?
「そう、だいたいそんな感じかな」
―では、今季が本当に最後のシーズンになりますか?
「だいぶそのつもりです。昨シーズンは引退と続行は50/50だったけど、今シーズンは、もちろんまだ100パーセントとは言えないけど、かなりその方向かな」
―そういう思いでスタートした今シーズンですが、グランプリシリーズのフランス大会では3位! 最後のシーズンの最後のグランプリで、初めての表彰台でしたね。
「すごく嬉しかったです。これまでのキャリアの中のいくつかの試合で、すごくいい演技で『あと少しで3位だった4位』ってことがありました。そういうことを経てここまで来たので、僕自身のためというよりも周りの人や応援してきてくれた人たち、僕のチームのためにも、メダルを手にできて本当によかったと思っています。といっても、そう気づいたのは試合の後だったんです。メダルをもらったらファンの皆さんがすごく喜んでくれていて、すごく驚いたんです。そして、本当に嬉しかった、ありがたいなって」
―選手としては、多分これが最後の五輪となると思いますが、どんな思いでいますか?
「五輪に出場できること自体に感謝しています」
―ソチ五輪のときと、違いを感じますか?
「年をとったよね(笑)」
―そうですね、みんな年をとりましたね(笑)。
「ふふふ。そうだなあ、でも本当に、『年をとった』ってことかな。成熟したし、ものごとを違った側面から見られるようにもなった。前回と明らかに違うのは、選手としても振付師としても五輪に出るということですよね。五輪出場選手では、エリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)のプログラム(ショートプログラム『カルメン』)を振付けました。選手であり振付師であり、っていうのはとてもユニークだしいいよね」
―選手としては最後の五輪です。自身のプログラムも振付けた振付師としての目も持っているミーシャさんですが、ショートとフリーのどんなところを見てほしいですか?
「心をこめて滑るので、ただ見て、ただ感じてほしいです。ぜひ好きなように見てほしいなあ」
―最後の五輪としての寂しさを感じることはありますか?
「多分、五輪が近づいてきたらそう思うんようになるんじゃないかな。でもなるべく感謝するように努めているんです」
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明日のショートプログラム、ミーシャは第3グループの4番目(全体の16番目)の滑走になります。
だいたい12:17ころ、お昼休みのランチの時間帯にちょうど見られる方もいらっしゃるかもしれません。
ミーシャの『アヴェ・マリア』も、しかと目に焼きつけたいです。