日々

あの人を見た朝。

朝食に55分もかけ、ゆったりと過ごした今朝のうちの子ども。
そのために、いつもより30分くらい登園が遅れました。
帰り道、いつもとはちょっと違う道を歩いていたら、目の前を、自転車に乗った親子が通過。

あ、あの人だ。
すぐにわかりました。

出産で入院していた病院で、同じ部屋だった人。
出産後、部屋が変わった後もまた、同じ部屋だった人だ、って。

出産予定日をかなり経過したので、「この日に入院してください」と指定されて入った病室は、大部屋が混んでいるとのことで、3人部屋でした。
でも使っているのは、2人だけ。
その、もう1人の人が、あの人でした。

心の中で勝手に、「こいずみさん」と呼んでいました。
昔の知人の小泉さんに似ていたから。

こんなに彼女のことを覚えているのは、ものすごく好きな声だったから。
たまに出入口ですれ違う時に会釈するくらいで、何も話はしなかったんだけど、家族や看護婦さんと話している声が、すごくよかった!

出産後に部屋に戻ってきたら、まだ同じベッドに彼女がいたんだけど、翌日くらいに別の部屋に移っちゃったんですね。
あーあいなくなっちゃった、と思っていたんだけど、私の入院していた病院では、母子は別室で、子どもが泣いたら授乳室に行く、っていうシステムだったので、基本的にみんなの姿を授乳室で見かけて、まあ、それはそれで大変に興味深い時間が流れており(こちらに少し書いています)、そんな授乳室で私は、なんとなくこいずみさんのことを見たり、もちろんほかの人のことを見たりしていました。
でもなぜか、こいずみさんをちらっとみると、目が合ってしまうことが多く、ああ、ガン見してると思われちゃうー、とどぎまぎしたりしていました。

そんなある日、私も大部屋への移動が決まりました。
その部屋の入口の名札を見たら、なんと、彼女の名前が!

どこか嬉しい思いでいたんですが、でもベッドは6人部屋の対角線上の位置(こいずみさんは窓側、私は廊下側)だったし、みんなカーテンを引いているので、前と同じく、同部屋同士でなにも接触はないんですね。
ないんですけど、ある時ちょっと挨拶しようかなと思い立ち、ちょうど部屋ですれ違う時に、こいずみさんに声をかけました。
「また、同じ部屋ですね、ふふ」って。

いや、怖いだろ、私。
これまで何日も何回もすれ違っていて、授乳室でなんだか比較的目が合うことの多い人が、突然話しかけてきて、しかも、「また同じ部屋ですね」って笑ってる、って。

って思ったので、その後は一度も言葉を交わしませんでした。余計怖いかもだけど。

その数時間後、仲良くしていた掃除のおばちゃんが訪ねてきてくれました。
「あなた、ベッドの位置、移りたいって言っているでしょ。窓側がいいのよね。今日空くから移れるわよー」という嬉しいお知らせを、大きな声で伝えてくれました。
ああああ、おばちゃん、大変な吉報をありがとう。
吉報なんだけど、今、2つある窓側のベッドの、まだこの先も入院する予定のこいずみさんが、カーテンの中でこの話を絶対に聞いてるよー、あああああ。
こいずみさん、誤解しないでーーー。
こいずみさんと同部屋だと知る前から、「大部屋の窓側」を希望していたんだけど、ってもう何を言っても伝わらないっすよねー。

その後、お互いに退院したので、もう会う(っていうか、見かける)こともないと思っていたのですが、病院の1か月健診で、自治体の6か月健診で、さらには1歳半健診でも、彼女の姿を確認しましたっ!
名前を呼ばれて「はーい」と言う声が、相変わらずとてもいい。
自治体の検診は、区域によって分かれているので、結構近所に住んでいるらしいことが判明したわけです。
とはいってもその後は見かけることはなく、次の健診なんていつだろうってくらい先だし、っていうか、こいずみさんのこと、すっかり忘れていました。

話が長くなりましたが、そこで、今朝です。
私の目の前を横切って行った自転車に乗っていたのが、あの人、そう、こいずみさんだったんです。
子どもを2人乗せていた(上に1人子どもがいたのは、入院中に確認済み)ので、多分間違いなし。

思わず、時計を見て時間を記憶し、あっという間に小さくなっていく自転車の後ろ姿をじーっと見つめ、どの角を曲がるか見ようと思ったのですが、確認できず。
しかし、手前の2つの角は曲がらなかったってことは、その先に行ったんだな、と想像。
自転車に乗っていたのは、上の子の幼稚園か、兄弟2人の保育園への送りなんだろうな、と。
もし保育園だとすると、ここをあの方向に自転車で向かっているのなら、認可保育園の可能性は低い。
というようなことを瞬時にプロファイリング(っていっても、犯罪の話ではないけど)していました。

まあ、中高時代、憧れの先輩の行動を観察、分析、予想する活動を大変に愛好していたので、単に、プロファイリングが好きなんですね。
当時、予想は結構当たり、嬉しかったのを覚えています。
今思うと、先輩がこの時間にここを通るはずという予想が当たったから嬉しかったのか、先輩を見られて嬉しかったのか、ちょっとその辺が若干あいまいだった気がします。

てことで、もしかしたらまたこの付近でこいずみさんを見かけることがあるかもしれない!
と思ったら、結構楽しくなってきました。
大丈夫です、ストーキングとかはしないので。
あの頃(入院ではなくて、中高時代のプロファイリング活動)を思い出して楽しくなってきました。

さて、仕事しまーす。

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川口悠子さんの講座があります。お時間、ご興味ある方は、ぜひ!

11月18日(日)13:00-14:30
朝日カルチャー新宿教室
「川口悠子を育てたサンクトペテルブルク」

ロシア代表のペアのフィギュアスケート選手として、輝かしい成績を残した川口悠子さん。16歳で日本を離れ、2003年からはロシア・サンクトペテルブルクを拠点に活躍してきました。
ペア演技を見るコツやパートナーとの関係などペアならではのお話、フィギュアスケート王国・ロシアの代表選手として肌で感じてきたサンクトペテルブルクのフィギュアスケート界のあれこれ、サンクトペテルブルクでの16年の生活のこと、同じホームリンクで練習した同世代のプルシェンコや世界トップ選手たちとの交流秘話、国内外のアイスショーでのこぼれ話など、幅広いお話がたっぷりの1時間半です。

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121日(土)13001430

朝日カルチャーセンター 新宿教室

「フィギュアスケートの楽しみ方 ~プログラムの味わい~」

スケーターたちの滑るプログラムを分類してみると、いくつかにわけることができそうです。

例えば、映画やミュージカル、バレエなどの音楽を使って、もともとある世界観にさらにオリジナルテイストを加味するもの、また、テーマやストーリーはなく、音楽の調べそのままに滑るもの……こうしたさまざまなプログラムをじっくりと見ることで、プログラムの味わい方や楽しみ方のヒントをお話します。

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ライター 長谷川仁美です。 フィギュアスケートのこと、そのほかに日々のことなどを。 「やっぱり、フィギュアスケートっていいな」「やっぱり日常っていいな」という思いで、このサイトを続けています。