先日、日本に一時帰国中の川口悠子さんとお会いしてきました。

―最近は、どんなことをしていますか?
ダンスにハマってます。もともと、滑ることより踊ることの方が好きなくらいだから(笑)。今は、やったことのなかったタンゴに挑戦中で、今日も、リンクで滑ってからタンゴのレッスンを受けてきました。ちゃんと、タンゴ用のヒールを履いて。
―え? 今日、スケートとタンゴをやってからここに来たってこと?
うん(と、涼しい表情)。
―さすがです。それにしても悠子ちゃん、ヒールを履いているんですね。
ヒールを履くと、姿勢がぴっとなって気持ちいいんですよね。今、バレエとかもレッスンを受けているんだけど、足の動きに癖があるのがわかったので直したりしてます。(2016年1月の)アキレス腱(の断裂)を急いで治しちゃったから、その影響で。そういうのが、とても楽しい。
―スケート関係では、タチアナ・ナフカのアイスショーに何度か出てましたね。
この間まではナフカの『紅い花(Аленький цветочек/アーリンキィ ツヴェトーチク)』に出ていたんだけど、すっごく楽しくて。これの1つ前の『ルスランとリュドミラ』(こちらもナフカのショー)のときには出番が3分だけだったんだけど、今回は最初から最後までずっと出ていて、衣装もきれいで。体力的にも精神的にもきつかったけど、楽しかったです。
―写真を見ると、すごくロシア的で、素敵。
ストーリーになっているショーなので、バレエとかを見ているような感じかな。この衣装は、スカートがスポンジでできているの。こっちは長いスカート。こういうスカートでもスロージャンプを跳ぶから、おもしろかった。
ショーの暗い照明のなかだと、スロージャンプはどうしても両足着氷になりがちなんだけど、サーシャ(パートナーのアレクサンドル・スミルノフの愛称)と、「今日は絶対両足にならないようにしようね」とか話して、助け合って。
―ロシアでは今、アイスショーが盛んですよね。
大きいものが3つあって、ナフカのと、(イリヤ・)アベルブフのと、(エフゲニー・)プルシェンコのと。もともと、アベルブフのショーにナフカも出ていたんだけど、彼女が独立して今のナフカショーになっています。
今年のお正月は、モスクワで何度もナフカショーがあったので、ナフカショーに勢いがある感じかな。なんとなく、お互いのショーが少しライバル関係のようだし、開催時期も似てくるから、スケーターはどれか1つのショーに出る感じです。
―スケーター以外では、どんなことをしていますか?
教えたりもしています。サンクトペテルブルクに駐在している日本の家族の子どもたち10人くらいかな、週に1、2回教えているんだけど、これは長く続いてますよね。
あと、この間は3週間、アダルトの大会に出るためにサンクトに来ていた日本の方2人に、個人レッスンとプログラムづくりもしたんです。
―振付け?
そう、初めての振付け。
―振付け、やってみてどうでした?
ああ、できるんだ、って思って。曲も長かったので、編集ってほどではないけど、いくつかのパートに切ってそれを繋げる、っていうことまではできた! これまで、曲のカットは、『バブリーダンス』のときに、ちょっと長かったので後ろを切ったくらいしかやったことがなかったけど、自信になりました。
―テクニカルスペシャリストのお仕事のほうは?
まだ、サンクトの小さい試合のテクニカルスペシャリストをやらせてもらっているというところだけど、楽しいし、私に合っていると思う。
スペシャリストとして試合を見るときには、(感覚として)曲が聞こえてこないし感情移入もしない。機械的に「何回転している」とか「角度が足りない」とか見ています。ちゃんと見てあげないと、って思うから。とくにロシアでは、試合の結果によって級が上がったりするので、選手たちも一生懸命。
このあいだ、サーシャの教え子が試合に出てきて、リンクの向こう岸にコーチのサーシャがうろうろしていたときがありました。やっぱり、気になりますよね(笑)。
―サーシャとの話とか、そうした諸々……インタビューに残しにくいものは、今度の講座で聞かせてください(笑)。
そうしましょう(笑)。
というような話をいろいろしてきました。
ということで、こんな感じの雰囲気で、もっと深い話、というかぶっちゃけたものというか、そういったお話を悠子ちゃんにうかがう講座があります。お時間、ご興味のある皆さま、ぜひいらしてくださいませ。まだ申し込みできます。
7月6日(土)10:30-12:00 朝日カルチャーセンター新宿教室
昨年11月に大好評だった川口悠子さんの講座の第2弾。
ロシア代表のペアのフィギュアスケート選手として、輝かしい成績を残した川口さん。16歳で日本を離れ、2003年からはロシア・サンクトペテルブルクを拠点に活躍しています。ロシア語もわからないところからスタートしたロシアでの日々を、前回以上に掘り下げてお話します。
ロシア人社会にどう入っていったのか、とくに、同国の選手同士でも難しいペアのパートナーシップを、ロシア人のスミルノフさんとどのように築いてきたのか、など、彼女にしかできないお話満載です。もちろん、ペアのルールや技の解説もお楽しみに。スケートファンにもロシア好きの方にも楽しんでいただける講座です。
また、今週土曜日など、通常の講座もあります。よろしくお願いいたします。
6月29日(土)13:00-14:30 朝日カルチャーセンター新宿教室
「アイスダンスと言ったら、トーヴィル&ディーンの『ボレロ』だね」とか、「ペアと言えば、ゴルデーワ&グリンコフの『月光』でしょう」など、フィギュアスケート界には、伝説の演技というものがあります。伝説の演技には、伝説になるだけの理由があり、それを知ることで、ますますフィギュアスケートが好きになることと思います。今回の講座では、そうした伝説の演技を、当時のスケーターの状況や思いとともにお話します。
「フィギュアスケートの楽しみ方 ~あのスケーターのビフォア&アフター」
7月20日(土)13:00-14:30 朝日カルチャーセンター新宿教室
世界トップ選手たちは、ジュニア時代も合わせると、5~15年くらい、さらにプロになるとそれ以上の長い期間、演技を見せ続けてくれます。その間には身体が大人になったり、技術力が高くなったり、表現力が深まったりなど、さまざまな変化が見られます。また、新しいコーチや振付師などとの出会いによっても、大きく変貌を遂げたスケーターも少なくありません。そうしたスケーターたちの変化を、その間の道程のエピソードとともに、コアに比較する講座です。
「フィギュアスケートの楽しみ方 ~アレクセイ・ミーシンというコーチ」
9月7日(土)13:00-14:30 朝日カルチャーセンター新宿教室
アレクセイ・ウルマノフ、アレクセイ・ヤグディン、エフゲニー・プルシェンコという五輪金メダリストたちを育ててきたロシア人コーチのアレクセイ・ミーシン氏についての講座です。現在の門下にはエリザベータ・トゥクタミシェワなどもいる、シングルスケーター中心に指導している78歳ですが、自身はもともとペアの世界選手権銀メダリスト。そうした経歴、功績、取材で何度も接してきた際のエピソードや関係者から聞いた話などとともに、ミーシンコーチについて語りつくします。