2009-10シーズン

バンクーバー五輪前の、2009年全日本選手権は、こんな大会でした。 #フィギュアスケート

さて、いまから12年前、2009年の全日本選手権についても、振り返っておきます。
昨日のことのよう、とは言いすぎですが、7、8年くらい前のことくらいには覚えています。

日時、会場(RACTABについても)など

2009年12月25日~27日、大阪府立門真スポーツセンター(なみはやドーム) で開催されました。

「なみはやドーム」という名前で覚えたこの会場ですが、2015年10月から「東和薬品RACTABドーム」になりました。
Wikipediaによると、2015年10月~2020年9月までの5年契約だったが、その後2025年9月までに契約延長されたそうです。いまや、この会場名、そして羽生選手のCMによってフィギュアスケートファンにすっかり浸透している東和薬品は、RACTABドームのある大阪府門真市に本社があるんですね。ちなみに、「RACTAB」というのは、東和薬品が開発した、水なしでも服用できる口腔内崩壊錠をつくる技術の名前だそうです。なるほど、楽ちんなタブレットってことですね。

……と思って、東和薬品のサイトを見たら、「RACTAB (Rapid and Comfortable Tablets)」とのこと。つまり「速くて便利なタブレット」でした。半分正解で半分はずれでした。

男子シングル

フリー最終グループの滑走順

#19 町田
#20 織田
#21 無良
#22 郡山
#23 小塚
#24 髙橋

総合順位

1位:髙橋大輔(23歳)(SP1,FD1) SP「eye」/FS「道」
前シーズンの初めの2008年10月、中国杯に出る直前に負傷。右足膝の前十字靭帯と半月板損傷、手術、リハビリ……という日々のために2008-09シーズンは全休となりました。それを経てのこの五輪シーズンで……という時期でした。この期間のリハビリによって身体の動かし方なども変わったと言っていましたね。この全日本優勝を経てバンクーバー五輪で3位。日本男子史上初めての五輪メダリストとなりました。

2位:織田信成(22歳)(SP3,FS2) SP「死の舞踏」/FS「チャーリー・チャップリン・メドレー」
2008年4月、それまでのリー・バーケルコーチメインから、モロゾフコーチメインに変えました。2009年世界選手権は、五輪枠取りのかかる大会です。SPは素敵な「仮面舞踏会」。トリプルアクセルをさらっと決め、3ルッツ+3トウループに……なんだかフェンスに近い……と思ったら、3トウを降りたところでフェンスにちょっとぶつかって転倒、驚いたー。フリーでは、きれいに決めた3F+2T+2Loがジャンプ跳びすぎで0点に。ジャンプ跳びすぎっていろいろなパターンがありますが、一番跳びすぎに気づきにくいものでしたよね。自分の跳んだものだけを数えると、その3F+2T+2Loは3つ目のコンボ。でもでもその前に3Aを単独で2度跳んでいたので、2つめの単独3Aがコンボ扱いになり、3F+2T+2Loは4つ目のコンボとされて……というものでした。2009年ロスワールドのFSプロトコルはこちら(織田さんは8位です)。
そんなこんなでドキドキしましたが、小塚さんと2人でバンクーバー五輪の枠を「3」つ取ってきました。4年前、「1」枠しかなかったことで行けなかった五輪。自分で枠取りしたこと、そしてこの全日本で出場を決めたこと、本当によかったです。なんだか、長い文章になりました。

3位:小塚崇彦(20歳)(SP2,FS3) SP「ボールド・アズ・ラブ」/FS「ギター・コンチェルト」
シニア3季目のシーズンでした。シニア1季目も2季目も、世界選手権の目標を「3枠」だと言い続けた小塚さん。シニア1季目は織田さんが、シニア2季目は髙橋選手がそれぞれ試合に出ていなかったので、小塚さんが必然的にキーマンになることになり、そしてそれを自覚し、実際に自分の手で成し遂げてきました。そうやって「3」枠をキープさせ続けてこの全日本3位を経て、バンクーバー五輪へ。フリーでは、自身初めての4回転トウループに成功する、そして翌シーズンには世界選手権で2位に……となんだかさらーっと簡単にスケートキャリアを進んできたかに見えますが、そのあとからの小塚さんが、本当に味わいがあって、いい。2009年全日本のころは、まだそういうスケーターになる前の、若々しい時期でした。

4位:町田樹(19歳)(SP4,FS4) SP「Celos (タンゴ・ジェラシー)」/FS「カサブランカ」
シニア本格デビューのシーズンでした。4年後のソチ五輪シーズンに鬼気迫る結果を見せた町田さんは、その4季前の全日本は、こういう悔しい結果だったんですよね。すごいことをする人たちの向こう側には、こういう悔しさや強い何かがありますね。そういうものに触れるとはっとさせられます。しかも、それに気づくのが遅ければ遅いほど、より際立って心に残る。だからこそ、あとから昔の試合を振り返るのは、本当におもしろいのだと思います。
さて、この全日本で4番となった町田さんは、年明けの四大陸選手権で2位に。この四大陸の表彰台は、1位アダム・リッポン(4年後のソチ五輪に出場)、2位町田さん、3位ケヴィン・レイノルズ(地元も地元のバンクーバー五輪には出場できなかったが、4年後のソチ五輪に出場)、という面々でした。四大陸の男子の結果は、こちら

5位南里康晴(24歳)(SP7,FS6) SP「序奏とロンド・カプリチオーソ」/FS「アランフエス協奏曲」
南里さんは、SPがいつも素敵な感じだったな―という印象なのですが、そうか2007-08,2008-09シーズンが「月光」、2009-10,2010-11が「序奏とロンド・カプリチオーソ」だったんですね。納得。ちなみにこの1つ前の2008-09シーズンのエキシビは「津軽海峡・冬景色」(振付:宮本賢二さん)でした。おもしろかったですよねー。南里さんは、翌2010-11シーズンまで現役を続けました。

6位:羽生結弦(15歳)(SP13,FS5) SP「ミッション・インポッシブル2」/FS「パガニーニの主題による狂詩曲」
ジュニア最後の年でした。このシーズンはGPファイナルとJr.GPファイナルが代々木で開かれて、そこで優勝もしています。水色の衣装で一生懸命滑っている子だなあ、という印象でした。このJr.GPファイナルというと思い出すことがあります。Jr男子フリー後の会見なのですが、ナン・ソンの到着に時間がかかるとのことで、先に羽生選手とロス・マイナーの2人だけでスタートしました。「自分以外のメダリスト2人の印象を」という問いに2人が答え終わった(2人とも「ジャンプが跳べてなんとかかんとかでそういうところが素晴らしいと思います」というアスリート的なコメント)ところで、ナン・ソン到着。他の2人の答えを知らないままこの質問に答えることになったナン・ソンは、「羽生選手は、とってもかわいいですね」と笑顔でコメントし、会見場が一気に笑いとほんわかムードに包まれました。この2009年JrGPファイナル男子の結果はこちら

▶男子SP結果SPプロトコルFS結果FSプロトコル最終結果

2021年全日本選手権に出場する選手たち

1位(SP1,FS1)……高橋大輔(23歳)
6位(SP13,FS5)……羽生結弦(15歳)
8位(SP9,FS8)……田中刑事(15歳)

女子シングル

フリー最終グループの滑走順

#19 中野
#20 安藤
#21 真央
#22 村主
#23 明子
#24 村上

総合順位

1位:浅田真央(19歳)(SP1,FS1) SP「仮面舞踏会」/FS「鐘」
この4年前は年齢制限のために五輪出場できなかったので、初めての五輪シーズンになりました。ここまでにすでに世界選手権で優勝(2008年)、2位(2007年)と実績を積んでいます。トリプルアクセルに強い思い入れを持ちつづけ、アルトゥニアンやタラソワに師事しつつ日本を拠点にして……となかなか厳しい状況ではありました。けれど常に常に頑張り続けました。そしてこの全日本選手権で優勝して、バンクーバー五輪に向かいます。

2位:鈴木明子(24歳)(SP4,FS2) SP「リバーダンス」FS「ウエストサイドストーリー」
シニアでも活躍し始めるころ体調を崩し、競技から離れていた時期を経て、2004年ころから試合に戻り、そのままあっという間に勢いに乗って2009年全日本選手権を迎えた、という印象でした。でもよく考えると、2004年から2009年までには5年もあるので、やっぱり長く厳しい時間もあったのだと今想像します。とはいえ印象としては「すごい勢いだった」という感じでした。特にこのバンクーバー五輪シーズンはすごかった。前2008-09シーズンのフリー「黒い瞳」でがーんと強い印象を確実にしたのちの五輪シーズンのショートもフリーも、それぞれ違うテイストなのに明子さんにぴったりで。五輪代表最終選考会のこの全日本でのフリーで、明子さん、転倒しているんですよね。ジャンプがおわったところで。でも結構序盤だったこと、その後いい演技を見せ続け、音楽の勢いとにっこにこの笑顔で、演技後は、やったー!!!という印象しか残っていませんでした。すごかった。このシーズンの、そしてこの全日本フリーの勢い、本当にすごかったです。

3位:中野友加里(24歳)(SP2,FS3) SP「オペラ座の怪人」/FS「火の鳥」
2002年世界ジュニア2位のあとシニアに上がり、2004年に大学進学とともに上京して佐藤信夫、久美子先生のところで基礎からやり直し、苦しい時期も過ごしました。それが2005-06シーズンに結実し、トリノ五輪シーズンのGPファイナルで3位、五輪代表まであと少し、というところまで行きました。それからバンクーバー五輪までの4シーズン、ほんっとうに頑張り続け、素晴らしい世界をたくさん見せてくれました。特に、2008年イエテボリでの世界選手権のフリー(最終滑走)で見せた「スペイン奇想曲」の、身体の無駄のない動き、気持ちいい動きっぷり、いい表情……素晴らしかった。となんだか思い出に浸ってしまいましたが、この2009-10シーズンを最後にすることを決め、先にフジテレビの内定も手にして臨んだ全日本。ケガなどもあり3位。惜しくも五輪出場は成らず。最後の大会になりました。

4位:安藤美姫(22歳)(SP3,FS4) SP「レクイエム ニ短調 K. 626」(モーツァルト)/FS「クレオパトラ」
バンクーバー五輪の代表選考基準に、「グランプリ・ファイナル3位以内の日本人最上位者を、その時点で内定する」とあり(※以下のグレーの枠内参照)、安藤さんGPファイナル日本人最上位で2位だったので、五輪内定して、全日本に出場していました。安藤さんはトリノにつづいて2度目の五輪。この4年間も活躍をつづけ、世界選手権でいうと、2007年優勝、2008年は途中棄権、2009年3位、と激しい波のようなすごい数シーズンを過ごしてきました。2007年全日本フリーの「カルメン」とか、2009年世界選手権フリーの「交響曲第3番」(サン=サーンス)とか、すごかったです。

【バンクーバー五輪の代表選考基準】
1.グランプリ・ファイナル3位以内の日本人最上位者を、その時点で内定する。この場合でも、原則として、全日本選手権への出場が条件となる。
2.全日本選手権優勝者は、原則として、選考するものとする。
3.以上の後、残る派遣枠については、
 a 全日本選手権3位以内の者
 b グランプリ・ファイナル進出者
 c 全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名(組)
を選考の対象とし、競技会での獲得ポイント、演技内容、ワールド・ランキング等を総合的に比較して、選考する。

なお、過去に世界選手権6位以内に入賞した実績のある選手が、シーズン前半にけが等で上記3の選考対象に含まれなかった場合には、オリンピック時の状態を見通しつつ、選考の対象に加えることがある。

5位:村上佳菜子(15歳)(SP5,FS5) SP「ネクター・フラメンコ」「フレンテ・ア・フレンテ」/FS「白鳥の湖」
ジュニア最後のシーズンで、ジュニアの国内外大会で優勝を続けていました。この2週間前には、Jr.GPファイナルでも優勝しています。元気でぴょんぴょんしていて、とてもかわいかったです。

6位:今井遥(16歳)(SP7,FS6) SP「フェスタ・フラメンカ」/FS「ライモンダ」
ジュニア最後のシーズンでした。この全日本6位で補欠になった四大陸に、中野さんが欠場(その後引退)することで今井さんが出場。5位と大健闘しました!

・村主章枝(28歳)(SP6,FS9) SP「G線上のアリア」「トッカータとフーガ」/FS「スパルタカス」……前年全日本は2位でした。3度めの五輪出場を目指していました。2014年ソチ五輪シーズンまで現役を続けました。

▶女子SP結果SPプロトコルFS結果FSプロトコル最終結果

2021年全日本選手権に出場する選手

17位(SP13,FS18)……村元哉中(16歳)

ペア

1位:髙橋成美&マーヴィン・トラン(SP1,FS1) SP「Farrucas」「Chano Lobato」「Maria Madgalena」「Paco Romero」/FS「蝶々夫人」
この全日本は、ペア1組でした。2004-05シーズンに川口悠子&デーヴん・パトリックと出たとき(その時も1組)以来3季ペアは0組。2008-09シーズンから2011-12シーズンまでの4季は成美さんとマーヴィンのペア1組でした。その2012年の世界選手権で、成美&マーヴィンは、3位になりますね。

ペアSP結果SPプロトコルFS結果FSプロトコル最終結果

アイスダンス

1位:キャシー・リード(22歳)&クリス・リード(18歳)(CD1,OD1,FD1)OD「さくらさくら」「Lion」/FD「天使と悪魔 より」
この大会の優勝でキャシーとクリスは、全日本3連覇となりました。4年後のソチ五輪の出場枠はネーベルホルン杯でとったのですが、このバンクーバー五輪シーズン、彼らはすでに前年のロサンゼルスの世界選手権で自分たちで枠を取ってきていました。「さくらさくら」よかったですよねー。このシーズンのオリジナルダンスは民族音楽がテーマで、ほんっとうに楽しいプログラムが多かったです。小道具OKで扇子を使ったり素敵でした。

2位:平井絵己(23歳)&水谷太洋(21歳)(CD2,OD2,FD2)
平井さんが水谷くんと組んだ最初のシーズンです。このころ、キャシーとクリス以外の日本のチームは、2年くらいずつで解消、新しいチーム結成、という時期だったような印象です。平井&水谷も2季滑って解消し、2011-12シーズンには、ブリナ・オイ&水谷が優勝、平井&マリオン・デ・ラ・アソンションが2位になります。

▶アイスダンスCD結果CDプロトコルOD結果ODプロトコルFD結果FDプロトコル最終結果

関連サイトをもう一度。

改めて、2009-10シーズンの全日本選手権、公式結果はこちらです。

2021年の現在からはもう12年も前の全日本です。
それでも、2021年の全日本に出場する選手が、4人もいるんですね。髙橋選手と村元選手はアイスダンスに転向して、羽生選手と刑事選手はシングル選手として。
かなりすごいことだと思います。
そしてもう一つ現在の目から感じるのは、この12年でアイスダンスカップルが増えてきた、という喜びです。
シングルはもちろんのこと、アイスダンス、ペアともに、より活性していくといいな、と思っています。

ABOUT ME
hasegawahitomi
ライター 長谷川仁美です。 フィギュアスケートのこと、そのほかに日々のことなどを。 「やっぱり、フィギュアスケートっていいな」「やっぱり日常っていいな」という思いで、このサイトを続けています。