クリス・リードさんへの追悼とアイスダンスの普及を目的とした「クリス・リード杯」という新しい大会が開催される、ということは、すでにご存知の方も多いと思います。
第1回クリス・リード杯は、2022年9月23日(祝・金)に、長野県の軽井沢風越アイスアリーナで行われます。
アイスダンスの大会です。
目次
大会要項をじっくり読んでみると……
アイスダンスの大会である第1回クリス・リード杯の要項をじっくり読んでみると、いろいろなことが見えてきました。
1) 競技種目が、31個もある。
要項を見ると、たくさんの競技種目があり、驚かされます。
数えたところ、31。
大きな分類は「パターンダンス」「リズムダンス」「フリーダンス」「ソロダンス」「全日本OBシャッフルクラス」の5つ。
前半3つはわかるけれど、「ソロダンス」とか「全日本OBシャッフルクラス」ってなんだろう、という疑問がわいてきます。
そこで、わからないことを実行委員会の皆さんにうかがいました。
2)「ソロダンス」とは、1人で魅せるアイスダンスのこと。
プロスケーターになった後のシェイ=リーン・ボーンを、アイスショーで見たことのある方も多いでしょう。
彼女の見せるものが、「ソロダンス」。
海外ではソロダンスのカテゴリーのある大会も時々あるようです。
今大会の「ソロダンス」に出場する方のイメージは、「アイスダンスをしたいけれど、パートナーがいないため、1人で滑っていたり、シングルの練習をしていたりしている方々」。
実行委員会の方によると、「大人のアイスダンスだと、パートナーってなかなかみつからないものなのです。だから、ずっとシャドー(ソロダンス)で滑るしかない方も多いのが、現状です」とのこと。
たしかに、パートナーを見つけるのって大変そうです。
でも1人で滑っているけれど大会に出られるのって、いいですね。
3)「全日本OBシャッフルクラス」とは?
■即席のアイスダンスチーム
「全日本OBシャッフル」の文字通り、とのこと。
アイスダンスで、全日本選手権(シニア、ジュニア、ノービス)や国際大会に出場経験のある方と参加者が、即席のアイスダンスチームとして出場する、というクラスです。
もう少し細かく言及すると、大会当日に抽選し、そこでパートナーが発表され、そのまま大会に出場するのだそう。
アイスダンスって、そんなことができるんですね。いちスケートファンとして、見たい!
と思っていたら、この種目創設には、もっと深い目的があるのだと教えていただきました。
■1人で滑っているアイスダンサーが、パートナーを見つけられるように。
この種目をつくったのは、パートナーが見つからない方々が少なくない現状を、少しでも打破するため、です。
「トライアウトを受ける前に、『組むこと』に慣れておきたい」とか、「組んで滑走するシーンを、パートナーサーチ(のサイト)などに掲載して、トライアウトのオファーを待ちたい」といった思いを持っている方へのサポートになることを期待したコンセプトだそう。
アイスダンスにしっかり取り組みたい方の、ご自身のプロモーションに役立ててもらうために、全日本のOBたちが力を貸してくれるのです。OBの皆さんや実行委員会の皆さんの、アイスダンスへの思いが感じられます。
■出場する全日本OBのほとんどが、クリスに指導を受けた経験がある。
さらに、クリス・リード杯で「全日本OBシャッフルクラス」をつくったのには、クリス自身も大きく関係しています。
今回、全日本OBとして出場する予定のアイスダンサーのほとんどが、クリスに、リフトやスピンを教えてもらった経験があるそう。
そのため、「クリスのためなら」と、お仕事などの合間を縫って、今大会に駆けつけるのだといいます。
クリスは、「日本のアイスダンスを盛り上げていきたい」と、繰り返し話していました。この「全日本OBシャッフルクラス」創設も、そのひとつの芽吹きですね。
クリス・リード杯ならではの特徴
実行委員会の皆さんのお話を聞きながら、さらに大会要項をじっくり読み進めていくうちに、いくつかの新しいことにも気づきました。
1) 未就学児から年配の方まで出られる。
クリス・リード杯には、年齢制限がありません!
「4.出場資格」を読むと、「JSF(日本スケート連盟)選手登録の有無を問わず参加できる。」とあります。
つまり、誰でも出られるんですね。
通常の大会とは違って、興味深いです!
2) シングル選手も出場できる(アイスダンスの大会だけど)。
競技種目の表を見ていたとき、「フリーダンス」の「オープンFD」って、どういうことなんだろう、という疑問がわいてきました。
他の種目には、「2022-23シーズンの課題」など演技の条件があるのに、「フリーダンス」の「オープンFD」には、そういう規定がありません。
あるのは、「9個の要素まで実施可能。レベル判定は実行された場合全てベース。ジャンプは最大1回転まで。スピン・TW(ツイズル)の回転・回転制限はない」という注意書きです。
これはつまり、「1回転までのジャンプはOK、9個までエレメンツを入れてOK」ってことですね。
実行委員会に確認すると、上記条件内であれば、シングルのようなプログラムを滑るのもアリ、ということだそうです。
おお、おもしろい!
3)採点には、バーチャル・ジャッジング・システムを導入する。
第1回クリス・リード杯は、日本で(多分)初めての「バーチャル・ジャッジング・システム」で行われる大会になります。
「バーチャル・ジャッジング・システム」がどういうものかというと……
参加者は全員、大会当日に、軽井沢風越アリーナの氷上で演技。
その演技をビデオ撮影したものを、全国各地にいる審判員たち(レフリー、テクニカルスペシャリスト、アシスタントテクニカルスペシャリスト、ジャッジ)が各自(ご自宅などで)採点するもの、です。
順位と得点は、約1週間後の10月2日に、オンライン上で発表されます。
さらにこのときには、審判員の皆さんからオンラインでのフィードバックがあります!
「なぜレベルが取れなかったのか?」など、参加者が勉強できるチャンスにももなりますね。
ちなみに、実際に日本スケート連盟でアイスダンスを採点している審判員さんたちが、今大会も担当されるとのことです。
もともと「バーチャル・ジャッジング・システム」を採用したのは、コロナ禍での移動を最小限に抑えたいという思いもあったとのことですが、これが成功すれば、新しい大会運営の形が見えてくるかもしれません。
まもなく、エントリー開始です。
クリス・リード杯、エントリーは7月1日(金)~20日(水)です。
こちらから、エントリーできます。
大会当日の会場での観戦については、コロナなどの状況を鑑み、大会直前の時期に発表されるそう。
最後に少し、実行委員会の皆さんのことも。
皆さん、すでに何か月も前から、頻繁にZoomで打ち合わせをされています。
実行委員会のメンバーは、アイスダンス経験者、シングル経験者、審判員、スポーツイベントに詳しい方などなどそれぞれ得意分野をお持ちで、その役割をぐいぐいと進めています。
約20名のボランティアの方々も、すでに始動しています。
初めてのZoomでの打ち合わせでは、皆さん、クリスとの思い出や、フィギュアスケートと自分とのかかわり、自分の得意なことで大会運営の一助となりたいという思いなどを話されていました。
たくさんの人たちの思いの詰まった第1回クリス・リード杯。
開催まであと3か月ほどです!